フォード生産方式について

フォード生産方式について語ろうと思う。

フォード生産方式の特徴

1.製品の標準化:
ラインアップをT型フォード1車種とし、その派生型のみを生産した。
2.部品の規格化:
規格化し、量産効率を高めた。
3.製造工程の細分化:
ベルトコンベア方式を採用し、流れ作業化した。

ここで注目したいのは3.であり、フォードの生産能率を飛躍的に向上させることに貢献した。
内容は作業マニュアルをつくり、熟練工を不要とした。
「労働者に対して2倍の給与を払った」ことで知られているが、これは最低給与を2倍にしたことを意味する。
一方で高給な熟練工を廃し、工員に対して高速でルーチン作業をこなすロボットとしての役割を求めた。

また、生産マニュアルの整備により、雇ってから即戦力化するまでの期間を短縮した。
そのためラインのスケール拡大に優れていた。

つまりマクドビッグマックを焼くように、どんなぼんくらでも同じように車を作れるようにした。
ここでいうぼんくらとは単純な操作を高速で行う能力が求められる。
複雑な作業を自分で考えて行う必要はない。単純な作業をマニュアルどおり繰り返し高速で行う能力だ。
そういう能力を持つ人材を雇うために2倍の給与を払う事を約束した。
2倍の給与を払っても3倍の生産効率を発揮すればよいという考えだった。


【フォード生産能力の真価の発揮】

フォード生産方式の量産能力は圧倒的であり、第二次大戦中、他の自動車メーカーが飛行機を1日1機つくるのが限界だったのに対し、フォードはベルトコンベア方式により1時間で1機の飛行機を作った。
これは生産能率の高さと、ラインのスケール拡大能力に優れていた点がきいている。

【フォードの製品ラインアップ】
最初はフォードT型1種としていたように、また色が黒しかなかったようにフォードは基本少品種に絞り大量生産する方式だった。
現在のアップルの製品を想像してもらえれば分かりやすいと思う。

【フォードの凋落】
フォードは基本少品種で進めていたため、消費者のニーズの変化と多様化に対応できなかった。
少品種大量生産を生産能率の高さで推し進めてきた当時、アメリカでは自動車は普及段階で誰もが持っている製品ではなかった。
しかし市場が成熟し、自動車が普及してきたとき、差別化し、新たな魅力を消費者に訴求するには多品種少量生産において高い生産能率を発揮することが求められたが、フォードは応えられなかった。


【転機】
80年代、オイルショックなどによりアメリカの自動車メーカーは凋落した。
そしてアメリカ本土の自動車シェアは日本メーカーにより蚕食された。
なぜアメリカメーカーは負けたのか?なぜ日本メーカーは躍進したのか?
この理由が研究された。

【後継者】
トヨタ生産方式が研究され、リーン生産方式としてまとめられた。
生産マニュアルどおりに高速でルーチン作業を行う単能工が否定され、自律的に生産方式を改善する多能工が評価された。
ボトムアップのほうが多品種少量生産に適しており、多品種少量生産が行えるならば、顧客ニーズの変化に合わせて新しい製品を短サイクルで投入できることが評価された。


【このお話の教訓】
自動車が十分に普及していなかったころにはフォード生産方式は有効だった。
市場の需要が十分に大きく、供給を上回っていたからだ。
いかに安価に大量に自動車を供給するかが大事だった。

自動車が十分に普及した後はフォード生産方式は有効ではなかった。
市場の需要は一服し、消費者の求めるニーズは高度化し、対する供給側はそれを奪い合わなければいけなかった。
いかに消費者の求めるものをすばやく市場投入できるかが大事だった。

フォード生産方式が否定され、トヨタ生産方式が賞賛される過程で否定されたものと賞賛されたものがある。

・否定されたもの
少品種大量生産
生産マニュアルとそれにしたがって動く単能工
純化された作業

・賞賛されたもの
多品種少量生産
自律した多能工
自働化された作業

【蛇足】
HとかNとかFとか、トヨタ生産方式といいながら開発標準整備するのはいますぐやめたほうがいいと思う。
結局少品種大量生産はできなかった。

あと携帯向けカードゲーム市場もすでに競合が乱立した成熟期に入っているんじゃないか?